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情報通信
プロジェクトストーリー

住民の生命と財産を守る決意を新たに
――球磨川の大水害などを目の当たりにし、
生み出された独自の「浸水アラートシステム」。

富士通ゼネラルは「防災行政無線システム(防災無線)」を約半世紀にわたって手がけてきた。
業界シェアはトップクラスで、この分野のリーディングカンパニーを目指している。

防災無線と言ってもピンと来ないかもしれないが、もっともわかりやすいのは、時報などを行う屋外に設置されているスピーカーだろう。

ただのスピーカーに見えるかもしれないが、その裏側には高度な技術が詰め込まれている。
それもそのはずで、有事の時に必要な情報を地域の住民に伝達する役割を持つ。
情報は正確でなければならないし、誤作動などがあってはならないのだ。
一方、2020年に熊本県で起きた球磨川の氾濫を目の当たりし、自然の驚異の前に無力感に似た思いすら抱いたという。

もっと住民の生命と財産を守りたい――そうした思いのもと、生み出されたのが「浸水アラートシステム」だ。
同システムをはじめ、防災無線にはどのような思いや機能が込められているのか。
携わるスタッフたちが、その胸中を語った。

profile

  • 山田 訓弘

    Yamada Kunihiro

  • 矢澤 秀昭

    Yazawa Hideaki

  • 臼井 洋介

    Usui Yosuke

  • プロジェクト当時から現在まで、地方自治体向け防災無線システムの方式設計を担当。
    モットーは「迷ったら前へ」
    休日の過ごし方は、ゴルフ・サックス演奏・ラグビー観戦・車など、多趣味な一面をもつ。
  • プロジェクト当時から現在まで、地方自治体向け消防・防災システムの受注に向けた地区営業部の支援を担当。
    志は「頑張る」「諦めない」「やり遂げる」「顧客目線」「見た目も大事」。
    休日の行動範囲は広く、住まい(神奈川県 川崎)~自宅(福島県)~実家(茨城県)を行き来。

  • プロジェクト当時は、プロジェクトリーダーとして企画からシステム納入までを担当。
    現在は、更なる防災システムの拡張(企業秘密)のプロジェクトリーダーとして新たな挑戦中。
    「どんなものでも良いところがある!」をモットーに、風通しの良い自由な意見・アイデアを大切にする。
    休日はサウナに通い、心と体を整えている。

防災無線は住民の生命と財産を守るインフラ。

日本は自然災害が多く、もともと防災無線へのニーズは高い。そこに2011年の東日本大震災がきっかけとなり、ますます注目度が高まってきた。近年では南海トラフが特に注視される災害の一つとなっている。防災無線は日本全国の自治体が主に導入するインフラシステムで、大きく2つの機能を持つ。一つは住民に情報を伝える同報系で、親局(市町村役場)から各所に設置された子局の屋外スピーカーで避難勧告などを行う。最近では、スマートフォンを通じて住民に情報を伝える動きも活発だ。もう一つが移動系で、災害現場の情報を専用の無線装置を通じ市町村役場とやり取りをする。こちらは主に自治体の職員や担当者たちが使用するものだ。

一口に防災無線と言っても、求められる性能や機能は自治体によって異なってくる。住民の生命と財産を守るインフラとして一定の品質は絶対に必須である。その上で、都市部、山間部、平野部、沿岸部などではそれぞれに要求が違ってくるのは想像に難くないだろう。富士通ゼネラルは同報系と移動系、両方について「無線のコアなプログラミングから基盤制御、端末の調整まですべてを手がけています」と臼井はいう。このため、「自治体のニーズに細やかに応えることができ、大きな強みとなっています」と山田。「営業としては、防災無線の専門コンサルタントとして自治体の顕在的・潜在的な課題を明確化し、ベストな解決策を提案しなければなりません」と矢澤は強調する。

倒壊する防災無線の子局を目にし、言葉を失う。

中でも、防災無線に求められる根源的な性能は「地域の住民に正確に早く情報を伝えることです」と山田は話す。とりわけ、いつの時代、地域でも最重視されるのがスピーカーによる伝達だ。ビルが立ち並ぶ住環境、暴風、降雨、降雪の中でも、クリアな音声で住民に命を守る行動を促さねばならない。「スマホでは危機感が伝わらないという報告もあります。スピーカーから音声が聞こえてくると、災害が間近に起こっていることが実感できるんです」と臼井。だからこそ、富士通ゼネラルでは力を入れてきたのだが、唖然とさせる出来事が起きた。2020年の球磨川の氾濫だ。
富士通ゼネラルは球磨村向け無線防災の事業を請け負っており、ちょうどフィールド担当のエンジニアが現地調査に行っている時だった。フィールド担当のエンジニアたちはホテルで缶詰め状態。電気が通っていないため、思うように連絡が取れない。現地の様子を知るためにTVをつけると、屋外スピーカーを取り付けた柱が濁流で倒壊している様子が映し出された。

「言葉を失いました」と山田は語る。ほとんど想定外の出来事で、自然の驚異に圧倒された。エンジニアたちは数日後、泥だらけになって戻り、現在は復旧作業をしながら防災無線の設置工事を進めている。「自然の驚異にさらされても、さらされている時だからこそ、確かな情報を伝えられる装置にしたい」。山田たちは防災無線への思いを新たにした。

自動で増水を感知し警告する「浸水アラートシステム」。

球磨川の氾濫では役に立ったシステムもある。臼井が数年前に開発していた緊急時のバックアップシステムだ。これは屋外からも子局を通じて放送を行える仕組みで、濁流のため庁舎内の防災センターに近づけなかった球磨村で有効に働いた。しかし、もっと災害時に強いシステムを求めた。「ちょうど水害が多発している時期で何かできないかという思いが募り、開発を検討していました」と臼井。そうした思いを乗せついに「浸水アラートシステム」が完成した。
浸水アラートシステムは屋外子局にセンサーを取り付け、河川の一定以上の増水を感知したら、予め設定されているサイレンとメッセージを自動で発報する。これにより、市町村役場が有人・無人に関わらず、いち早く地域の住民に注意喚起できる。一分一秒を争う有事には、大きな効力を発するのだ。
「長野県飯田市で実証実験を行い有効性が確認されました。命を守る行動を迅速に促す手段として価値が高く、多くの問い合わせをいただいています」と矢澤は自信をのぞかせる。

実際、浸水アラートシステムは北海道の自治体で導入を進めている。ただし、導入して終わりではない。システムには改良の余地はあるし、自治体によって使い方も異なる。「アフターケア、保守は非常に重要です」と山田は言う。現在は最新の技術を駆使し、リモート操作での保守を可能とした。自治体の求めや緊急事態に即座に対応できるようになっている。

新しい時代に則した開発にも着手。

富士通ゼネラルは半世紀にわたり防災システムを手がけてきたが、「完璧なもの」が作られることは決していない。常により良いものを求め改善を繰り返している。ここ数年の取り組みとしては「BIP(Business Innovation Project)」と銘打ち、複数の部署のメンバーが集まる横軸活動がある。毎年テーマを決めて新機能や新製品を生み出すための議論をする。「浸水アラートシステム」もこのプロジェクトが生み出した成果の一つだ。また、プロジェクトの別の側面として、他部署のスタッフと積極的に関わることで「プロジェクトを離れた場でも連携が取りやすくなりました。日常の業務で考えや意見を聞いて改善に役立てています」と臼井は話す。

このほか、SDGsの観点から、資源の有効活用の取り組みも活発になっている。「子局は定期的な取り換え・刷新が必要ですが、全部を新しくしていては資源が無駄になります。あるものは有効に使い、本当に必要なものだけを取り換える。そうすることで、自治体としては年間予算も抑えられるのでメリットは大きいのです」と矢澤は説明した。いつの時代も防災無線は自治体の必須のインフラだ。一方、時代によってニーズは異なる。いかにニーズをキャッチするか。富士通ゼネラルの防災無線は時代と共に進化していく。

さらに良いものへの探求は尽きない。

「私自身は20年以上にわたり防災無線に携わっています。経験や知識を活かしながらも、さらにより良いものを常に求めています。防災無線はエンドユーザーとなる自治体の方の話を直接聞きながら、本当に求められるシステムを作り上げます。それがこの仕事を行う醍醐味の一つです」と山田。臼井は「技術者としては最先端のものから希少性の高い技術までに関わることができる面白さもあると感じています。それも空論の技術ではなく、ユーザーにとって役に立つ技術に変換する。そこに難しさもやりがいもあります」と話す。「防災無線は住民の生命と財産を守ります。本当は役に立つ場面がないほうがいいのかもしれませんが、なくてはならないものという側面もあります。万が一の備えとして導入し、それが良いものだとフィードバックを受け感謝される。仕事の意義も手応えもとても大きいのです」と矢澤は熱く語った。それぞれに防災無線への強い思いを口にしたのだった。

 

※所属や内容などは、取材当時のものです。